〈スペシャリスト〉フィジカルアセスメント インストラクター

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フィジカルアセスメントインストラクター

信じられるのは自分。体からのメッセージを受け取り、伝える力を養おう

写真:フィジカルアセスメント インストラクター
お二人が取得している「フィジカル・エキスパート」とはどのような資格ですか?

Oさん:これは、「フィジカル・アセスメント」について学び、それを院内で勉強会などを通じて看護師に「教えていく」ための研修のことです。分かりやすくいえば、呼吸音、心音、バイタルサインなどから患者さんの全体像をアセスメントし、それを日常のケアに活かしていく、その手法を学ぶものです。

Hさん:イムスグループ本部での研修ですが、グループ内の各病院から1名~3名が推薦されるのですが、半年をかけて全8回ほどの研修を受けます。

具体的には、どのようなことを学びますか?

Oさん:たとえば、さまざまなパターンの呼吸音や心音を聞き、お互いにバイタルサインを測定し合います。それから骨格筋に関しては、筋肉や骨の解剖を学び、五感で感じながらアセスメントしていく手法を学びます。脳であれば、神経の解剖ももちろんですが、意識レベルや神経について学び、麻痺があるかどうかなどを判断する力を付けていきます。これらは、機械で測定するのではなく、自分自身の身体で感じ取ることが必要です。

Hさん:現在は病棟でも電子血圧計を使用していますが、こうした機械は「道具」でしかなく、「何も無いときにどうするか?」を基本から学び直します。これらをもとに患者さんの病状を判断するという過程を、院内の看護師にも教育していくというのが、私たちの役割です。

お二人はなぜ、この研修を受けようと思いましたか?

Oさん:私は新卒から8年間、整形外科病棟に勤務しています。整形外科の患者さんは、「骨折」については体の外からでも分かりますが、全身状態はそれだけでは分かりません。また病棟内には内科系の患者さんもいますので、「内面」から判断できる手法を身に着けたい、スキルを深めたいと考えたからです。研修は、1から学び直す気持ちで参加しました。学生のときに習ったはずのことを、結構忘れていることにも気づかされました。

Hさん:学生のときの教育担当の先生が、「自分の目を信じなさい」と教えてくださいました。自分なりに本で学んだりしましたが、業務量が増えてくると、その業務以外の知識がだんだんと薄くなってくるのです。患者さんへの対応にしても、自分で考えるのではなく「●●さんがこう言ってました」という言葉を聞くことがありますが、これは違うのではないかと思います。自分の目で見て、体で感じて、患者さんの状態を理解する、誰かの助言ではなく、自分がベッドサイドで判断したいと考えたのです。

現在はどのような役割を担っていますか?

Oさん:私たちは現在、教育していく立場にあります。院内には他にも「フィジカル・エキスパート」がいますから、みなで協力して院内研修を企画したり、資料をつくって講義したりしています。症例検討が多いと思いますが、年に数回の研修を行います。たとえば「発熱している患者さん」で考えると、体の変化は熱だけではありません。呼吸音はどうか、汗はかいているか、顔色はどうかなど、「発熱」以外の症状にも目を向けよう、そこから全身状態を把握する「判断力」を身に付けていこう、という研修です。

Hさん:看護師になってからの経験は人それぞれですから、経験が長ければフィジカル・アセスメントが上手い、というわけではありません。一方で、みなが同じような疑問をもっていることもあります。私たちの役割は、院内の看護師がみな、年齢を問わずに「その人らしい看護」ができるようになる、お手伝いをすることなのです。